科学と哲学のブログ

哲学、科学について書いていきます

機能的分析と還元的説明 – Jaegwon Kim, philosophy of mind

Jaegwon Kim, "philosophy of mind" の意識と心身問題について書かれた章(チャプター10)の読書ノート、その4です。


同一性による還元は、還元的説明にはならないが、説明ギャップに対する回答になっていることを確認した。もう一つの方針は、機能的分析(functional analysis)である。機能的分析は、還元的説明をもたらすことができる。

機能的分析においては、例えば、痛みに次のような定義を与える。 「痛みとは、体組織の損傷によって引き起こされて、忌避行動を引き起こすような状態のことである。」 これは痛みという概念の定義として提示されている。機能的分析では、このように、定義の中に"引き起こす"という物理法則(因果法則)への言及がなされている。同一説ではこのような法則への言及はない。もしC-fiberの励起が、体組織の損傷によって引き起こされ、忌避行動に引き起こすことが神経科学・物理学的に明らかになるならば、上記の痛みの機能的定義から、C-fiberの励起が痛みであると説明することができる。

だが、同一説において同一性の妥当性を論証する必要があるのと同様、このように与えられる機能的定義が妥当かどうかが別途論証されなければならない。クオリアには機能的定義を与えられるのだろうか? もしできないのなら、クオリアに還元的説明を与えることにも失敗することになる。