科学と哲学のブログ

哲学、科学について書いていきます

2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

物理主義の限界 – Jaegwon Kim, philosophy of mind

Jaegwon Kim, "philosophy of mind" の意識と心身問題について書かれた章(チャプター10)の読書ノート、その7です。これでチャプター10は終了です。 もし同一説が正しければ、つまり、痛みとC-fiberの励起が同一であるといったようなことが正しければ、ハード…

天才科学者Maryが知らなかったこと – Jaegwon Kim, philosophy of mind

Jaegwon Kim, "philosophy of mind" の意識と心身問題について書かれた章(チャプター10)の読書ノート、その6です。 Frank Jacksonは「Maryの部屋」(1982)という思考実験で、現象論的意識は物理主義によって捉えられないとして、物理主義を批判するという主張…

意識と脳科学 – Jaegwon Kim, philosophy of mind

Jaegwon Kim, "philosophy of mind" の意識と心身問題について書かれた章(チャプター10)の読書ノート、その5です。 意識と科学との関わりについて、次の3つの関連しているが異なる問いを立てることができる。 意識は科学によって説明されるか? 意識は科学に…

デネットのクオリア消去主義(1) – Quining Qualia (1988)

ダニエル・デネットの論文、Quining Qualia(1988)の読書ノートその1です。心の哲学において、クオリアという概念を否定する議論が展開されています。 1. Corralling the Quicksilver (水銀を囲い込む) デネットはクオリアというものは存在しないと主張する。…

機能的分析と還元的説明 – Jaegwon Kim, philosophy of mind

Jaegwon Kim, "philosophy of mind" の意識と心身問題について書かれた章(チャプター10)の読書ノート、その4です。 同一性による還元は、還元的説明にはならないが、説明ギャップに対する回答になっていることを確認した。もう一つの方針は、機能的分析(func…

説明ギャップの解消: 還元と還元的説明 – Jaegwon Kim, philosophy of mind

Jaegwon Kim, "philosophy of mind" の意識と心身問題について書かれた章(チャプター10)の読書ノート、その3です。 心を物理主義的枠組みに取り込むためには、還元(reduction)か還元的説明(reductive explanation)のどちらかができれば良いと考えられている…

意識は物理的性質に付随するか? – Jaegwon Kim, philosophy of mind

Jaegwon Kim, "philosophy of mind" の意識と心身問題について書かれた章(チャプター10)の読書ノート、その2です。 前回心の謎とは意識の謎であると書いたが、意識にも様々な側面がある。意識の側面のうちの大部分はおそらく、物理主義的な説明が可能である…

説明ギャップとハード・プロブレム – Jaegwon Kim, philosophy of mind

Jaegwon Kim, "philosophy of mind" の意識と心身問題について書かれた章(チャプター10)の読書ノートです。 多くの哲学者は、次の形式の心身付随性(mind-body supervenience)を受け入れている。 もしある生物が、時刻tにおいて精神状態Mにあるならば、神経・…